解説リスト
大見出し
1.シバのからだ 
2.生育環境 
3.維持管理作業 
4.薬剤 
5.常緑芝 
6.その他 
本文は下の方です


1.シバのからだ

シバの種類
寒地型芝草と暖地型芝草
シバの生理
シバが枯れる原因と荷担割合
横へ伸びて成長する
光合成
日照時間
活性と新陳代謝
はっきりしない原因
シバ成長のサイクル
病気は治らない? 
緑色の芝は健康な証拠?
散水が必要なメカニズム
シバの穂


2.生育環境

土壌の問題@
土壌の問題A
草地化のメカニズム
難しい同定
暑さの種類
地球温暖化?
ウンカの害
各種の虫害
害虫の“好み”
キノコやコケ、そしてワカメ?


3.維持管理作業

芝生管理の基本
芝生管理のカレンダー
全面貼りと部分貼り
作業の重要性と優先順位
“植える”は“植え替える”
作業の適期
シバの購入
土壌改良材
芝生の養生期間
凸凹の害
芝刈り機の磨耗
軸刈りについて
事故?
縁刈りの重要性
法面緑化
多いことの害
植栽基盤
芝刈り機について
工事と管理
芝刈り後の白変
芝生の縦じま
肥料の成分と散布量
苦労する順
除草剤の上手な使い方
殺虫剤の施用
秘密の退治方法
シバ焼きに期待する効果


4.薬剤

農薬への批判と不安
農薬の登録
薬剤の不活性化
毒性の強さ
芝生管理で使用する薬剤の量
薬剤の散布基準
いろんな薬害
除草剤の選択性
農薬の安全性の基準
草むしりと除草剤
ポジティブリスト制

5.常緑芝
冬でも緑のシバ
寒地型芝草と暖地型芝草
寒地型芝草を育てるための労力
簡単かどうかの問題
オーバーシーディングの基本
2種類の方法
夏季の単独育成
最大の難所“トランジッション”
オーバーシーディングの不思議
オーバーシーディングと寒地型の単独育成の違い
秋スタートの理由
洋シバについての私見

6.その他
屋上緑化
植物残さの処理
飼い主のマナー
公園の維持管理予算
管理レベルの考え方
公園管理への住民参加
役所の公園管理予算
専門家の言うこと







      ここからね!

1.シバのからだ

解説=シバの種類
 一般に“シバ”と呼ばれるものは、“イネ科”の植物としてくくられています。
 同じ仲間には、“竹”や“笹”、“薄(ススキ)”などがあります。日本で最も一般的なコウライシバは、ゾイジア属という範疇に入っています。その中に、ノシバもあります。ゾイジアと同列にギョウギシバ属があります。

 サッカー場などに貼ってあるバーミューダグラスは、このギョウギシバ属です。有名なところでは、この3種類(コウライシバ、ノシバ、バーミューダグラス)が、暖地型芝草にあたります。どれも、“匍匐茎”をもって、横へ横へと伸びていく性質があります。

 寒地型芝草としては、ペレニアル・ライグラスとか、ケンタッキーブルーグラス、トールフェスクなどといった種類があります。どれも聞いたことのないような属の名前がありますが、書かないでおきましょう。それらの多くは、“株”で成長するタイプです。

解説=匍匐茎について=「よくわかる芝生管理」へ飛ぶ




解説=寒地型芝草と暖地型芝草
 日本に昔から自然に生えていた芝で、コウライシバとかノシバといった種類のものを“暖地型芝草”と言います。“日本芝”などとも言います。もっと専門的に言いますと“ゾイジア”などと呼ばれています。

 もともとは欧州や北米の冷涼な気候の地域に生えていた種類のもので、日本に「冬でも緑ですよ」といって持ち込まれたものは、そのほとんどが“寒地型芝草”と呼ばれる種類でしょう。多くの人たちがそれらを“西洋シバ”とか“洋シバ”とか呼んでいます。“ベントグラス”“ケンタッキーブルーグラス”“ペレニアルライグラス”などといった名前のものです。

 生育最適温度は、

暖地型が、25〜30度で、35度くらいが限界
寒地型は、20〜25度で、30度くらいが限界
と、専門書には書いてあります。
 35度を超えるような日本の“暑い夏”では ダメなんですよ。寒地型芝草じゃ・・・。

図解=太陽と芝生
 



解説=シバの生理
 シバのシーズンは4月頃からといったイメージがありますね。シーズンの最初に青くなる(これを萌芽と言ったりします)ためにシバは、前年の秋頃から、体内に養分を貯めこんでいきます。

 萌芽した後は、どんどん成長して、葉や茎をたくさん出していくようになります。その(成長量の)ピークは意外に早く、梅雨明け頃だと思ってください。
 梅雨が明けて、夏が来たころになっても、芝生が青々としているイメージがありますよね。しかし、8月になると、シバは、秋からの休眠期にむけて、どんどんと成長スピードを落としていきます(成長自体を止めるのではないですよ。ピークを過ぎるという意味)です。

 で、シバの張替え(新規に“植える”ことも、シバにとっては“張替え”と同じ)ですが、張り替えて、そのシバが根付くことを“活着する”と言います。活着するには、新しい根っこを出していく必要があります。これは、お分かりになりますよね。

 ここで、植物の“上下関係”を説明しましょう。“上”とは茎や葉っぱのこと。“下”とは根っこのことです。上下はバランスが取れていないといけません。
 植木屋さんが木を植えかえるのを見たことありますか? ふさふさと葉っぱが生い茂った立派な木を植え替えるとき、植木屋さんは、多くの枝や葉を落としてしまって、ガイコツのような、スカスカの木にしてしまいます。

 なぜでしょうか? 根っこを丸ごと取れないからです。根っこには土がついているので、運ぶとき重くなります。ですから、直径1メートルくらいの球状にしますが、その球の中に納まる根っこは、今までその木が持っていた根っこの量のほんの少しでしかありません。

 上部(葉や茎・枝)をそのままにして植えかえると、葉っぱ等が要求する養分や水分を、残った少ない根っこでは対応不能なアンバランスな状態になるのです。
 バランスが悪いと、植物ははっきりした反応を見せますよ。弱るか、枯れるかの二つのうち、どちらかです。

 要は、植え替えというものは、その植物にとっては、とっても辛いことなのです。ですから、植え替え(張り替え)を成功させるには、穏やかな環境を作ってやらなければなりません。

 張り替えに穏やかな環境とは、植物が成長するために欠くことのできないもの、つまり“水分”と“温度”が適当に保たれている状態です。そういう意味で、これから暖かくなろうとする“春”が最適だろうと、私は思っています。

図解=葉の量と根の量

 ならば、春と言えば、具体的には何月がいいか? 私が北陸で施工するなら4月初旬かしら? あんまり厳密なことは言えませんね。まぁ、夏や秋、ましてや冬に比べれば、春がいいでしょう、といったムードですので・・・。



解説=シバが枯れる原因と荷担割合
 育てている植物の生育が不調になった場合、その原因が一つだけ、っていうことは希です。相談した人がみんな夫々違った意見を言ってくることも珍しくありません。
 体調の良いときは多少、無理をしても平気ですよね。しかし、寝不足が続いて過労気味のときに寒かったりすると風邪をひきやすいですよね。植物の不調には、複数の原因が存在することが一般的だと私は思っています。
 シバが枯れる原因として、私が思っている大きなものは順番に、
@活着不足(根付く前に枯れる)
A高温・渇水(散水を怠って枯れる)
B物理的なストレス(踏圧や擦り切れ)
C病害・虫害(これは意外に少ない・・)
D雑草(雑草に負けてシバの占有度が低くなる)
E日照不足(これは決定的)
Fその他(除草剤を誤ってまき過ぎた等)
 F以外では、ある一つの原因だけでシバが枯れてしまうような事態に陥ることは少ないでしょう。だから、逆に、原因が不明確な分だけ、対応策の割り出しも困難になってくるのです。

 そうは言うものの、数ある原因の中には、荷担割合の比較的大きなものが必ずあるはずです。そういう「これが一番、アヤシイな」っていうものから先に取り除いてやっていくようにすれば、あまり混乱しません。まぁ、難しい話ですけど・・・。

解説=はっきりしない原因

図解=人為的なストレス



解説=横へ伸びて成長する
 植えた年、もしくはその翌年に不揃いが残っていることは、あまり気にしなくて良いでしょう。シバは横方向へ必ず伸びていきます。私の自宅では、平成元年に庭のほぼ半分にシバを植えましたが、今では、芝生でないところはほとんど見当りません。

図解=7年で広がった芝生

 でも、そうなるためには、ちょっとしたコツが必要です。放ったらかしでは、なかなか実現しませんよ。何と言っても必要なのは、芝刈りと施肥です。しっかり肥料をやるとシバが伸びます。上に伸びようとするシバを刈ってやると、自然と横方向へ伸びやすくなります。

図解=部分貼り

図解=貼りシバ直後の生育不良


解説=光合成
 光の当たらないところでは、植物は生きてはいけません。我々は、肉や野菜を食べて活動のエネルギーとしています。植物は空気中の二酸化炭素を取りこんで、“光”によって、光合成(炭酸同化作用)という作用を行ないます。この作用によって、根っこからとり込んだ水分と、空気中からの二酸化炭素を、炭水化物(でんぷん)と酸素に変えながら生きていると言えます。


解説=日照時間
 
 コウライシバやノシバといった暖地型芝草は、1日あたり少なくとも2〜3時間は日光が当たらないと成長しないと言われています。でも、難しいことを言うなぁと、私は思っています。休眠期ではない暖かいシーズン中のことだと思うのですが、面として測定しようとすると、煙突や樹木の影が細かく差してきて混乱してしまうのです。「え、何分、日陰だった?」

 シバがうまく育たない原因の中で、この「日照不足」は決定的です。しかも、改善方法がない場合が多い。困りましたね。日陰では芝生は諦めた方がいいでしょうね。

 洋シバの中には、コウライシバ等に比較して、日陰に強いとされている種類があります。「自分の家の庭は日当りが悪いから、それで行こう」なんて人がいらっしゃるのですが、私はお勧めしいません。

解説=冬でも緑のシバほか

解説=活性と新陳代謝
 “年輪”をご存知ですよね。樹木の幹の切り口に現れる同心円の模様。色の濃い狭い幅の部分と、巾の広い薄い色の部分が交互になっています。狭い部分は、冬に成長したところです。

 樹木は木本(もくほん)と言って、体の中に永年器官を持っています。つまり、一度できた組織は、その木がある限りそこに存在します。シバは草本(そうほん)といって、普通は永年器官を持ちません。新しく成長した部分(葉っぱや茎)は、しばらくは“草”本体にくっついていますが、やがて、本体から抜け落ちます。
 多年生といって、何年も同じところに生えている草本もあります。しかし、その葉っぱや茎は常に入れ替わりを繰り返していて、何年も前から地上に存在していた茎葉はありません。

 シバはイネ科の植物です。単子葉類といって、ネギみたいに新しい葉っぱが中心から出てくるタイプです。古い葉は、どんどん外側になっていきます。最外周の葉っぱは古くなったら枯れ落ちていきます。

 コウライシバのような暖地型芝草は、冬になると活性(成長)が極端に低下します。根っこを含めた植物全体が枯れるのではありません。中から新しい葉っぱが出てこなくなると思ってください。活性が低下するということは、根っこから水を吸い上げたり、新しい葉っぱが出てこなくなることです。つまり新陳代謝が鈍化するのです。
 よく、「冬になると茶色になる」って言います(私も便宜上、そう表現していますが・・)
 しかし、正確には、「青い葉っぱが出てこなくなる」と表現した方が良いように思います。

図解=休眠期の色



解説=はっきりしない原因
 ワインのビンを金槌で叩く場面を想像してみてください。まぁ、100%の確率でビンは割れるでしょうね。誰か逆に、金槌の柄が曲がってしまったような情景を想像された方がいらっしゃいましたか? そんなはずはない・・。

 この場合、 “ビンが割れた”という“結果”の“原因”は、100%、“金槌でガラスビンを叩く”という行為にあります。金槌がビンに当たる一瞬まえに、ミスター・マリックが念力を発したのではないか、なんてことを想像した人、居ました? 居ませんよね・・・。

 でも、芝生の場合は事情が違ってきます。“シバが枯れた”という結果の原因が、ある一つだけに絞られることは希です。いくつもの原因が大なり小なり重なって影響した結果として“枯れてしまった”となるのです。

 そう、我が家の庭は、“もともと日当りがあまり良くなかった”。去年の秋に、自分で植えたのだが、“別に耕すわけでもなく、買って来た苗を置いただけ”だった。維持管理のことは、あまり知らなかったので“肥料はやっていなっかた。”梅雨明けが、やけに遅く、“高温・多湿の時期が続いて”いた。夏は暑かったが、“水遣りは2〜3回しか”しなかった。
 もう、こうなると、何が原因で枯れたのか分かりませんよね・・・。

解説=シバが枯れる原因と荷担割合


解説=シバ成長のサイクル
 コウライシバのような暖地型芝草は、暖かい時期にどんどん成長して葉っぱや茎を生産します。これを“夏のシーズン”とでも呼びましょうか。寒い時期には、ほとんどの活動を低下させて休眠期に入ります。これを“冬のシーズン”とでも呼んでおきましょう。シバは、この二つのサイクルを繰り返しているのです。

 そして、どちらのシーズンでも、その後半には次のシーズンの準備をしていると言ってもいいでしょう。夏のシーズンの終わり頃には、冬のシーズンに向けて、体内(地下茎や地上茎)に栄養分をたくさん貯め込もうとします。冬のシーズンの終りがけには、夏のシーズンの最初の仕事、そう芽吹き(萌芽と言います)の準備を始めています。

 秋にシバを植えるということは、冬越しの準備を進めていたシバに対して、大方の“手足”(=つまり地下茎や地上茎)を切捨ててしまうことを意味します。つまり、ものすごく体力不足で、寒い冬をやっとやっと越すことになったのです。そんな状況のシバでは、春の萌芽のエネルギーも出てきませんよね。

 従って、次の夏のシーズンは、調整不足の野球選手みたいなもので、ちょっとしたトラブルですぐ怪我・入院となってしまうのです。そういう状態のシバには、特にケアが必要なんですよ。


解説=病気は治らない? 
 人間の皮膚にできた傷もそうですが、シバの病気も同じような経過をたどって“治って”いきます。

 傷や病気に冒された組織(細胞)が、薬剤によって治る(回復する)ことはほとんど有りません。その細胞は死にゆくだけです。“治る”ように見えるのは、あとから健康な別の細胞がどんどん出来てくるからです。

 シバの病気は、殺菌剤などをまいたら、パーッと治っていくのではありませんよ。その病気がそれ以上には進行しないようにして、新しい組織が下から出てくるのを“待つ”だけなのです。ですから、“治る”には、相応の時間が必要です。

 殺菌剤の中には、予防的に効果を発揮するものもあります。しかし、どうでしょう? 私は、一般家庭の芝生には、殺菌剤の散布まではお勧めしません。それは殺菌剤が“農薬”として危険だから、なんていう理由ではありません。農薬も風邪薬も、使いようによっては同じように“危険”ですから。

 ただ、病害同定の細分化と対象薬剤の細分化が進んでいるので、なかなか素人が、病気を同定して、それに合った的確な薬剤を得て散布することが難しい状況だと思うので言っているのです。


解説=濃緑色の芝は健康な証拠?
 「隣のシバは青い・・」って言うように、シバは青ければいいように思うでしょう?

 ところが違うんですよ。あんまり青いのは、考えものの場合がほとんどです。コウライシバとかノシバには、その植物が本来もっている葉っぱの“緑度”があります。これは、カラーサンプルを並べたような試験紙で目視測定したり、専用の機械で測ります。

 肥料をたくさんまくと、その中のチッ素分が吸収されて、一時的に“色が濃く=濃緑色”になります。「おー!きれいになった。」なんて、満足したことないですか?

 でも、本来あるべき色でなくなると、それは何らかの不都合が出てくるとみるのが妥当でしょう。チッ素肥料の多量の摂取で濃緑色になった植物体は、全体に軟らかくなって、人間の踏圧ストレスに抵抗力を失うばかりか、病害に罹りやすくなります。

 また、結果として“濃緑色”になる不調としては、フェアリーリングというキノコが発生する病害でも一時的に輪状に緑色になったりします。まぁ、たとえきれいな色であっても、“普通ではない色”がでてきたら、「おかしいぞ」と思った方がよさそうですよ。

図解=濃緑色になる病害


解説=散水が必要なメカニズム
 小学校の頃、ツユクサの葉の薄皮をはがして顕微鏡で見たでしょう。あれは、“気孔”を見たのですよ。植物は気孔から気体を放出しています。その気体には酸素が多く含まれています。その酸素は、地球にとって、かけがえのないものです。森林が重要なのはご存知でしょう。
 では、なぜ酸素を出しているのでしょうか。酸素なら、吸い込めばいいようなものですよね。実は、酸素を吸い込んで活動するのは主に動物です。植物は、炭酸ガスを吸い込んでいます。そう、気孔から。

 植物は、吸い込んだ炭酸ガスと根っこから吸い込んだ“水”で、葉緑素(葉緑体)の助けをかりて“炭酸同化作用”を行ないます。だんだん、思い出してきましたか。
 そうです。光合成ですよ。植物には光も必要なんです。植物が生きていくには、“水”“光”と“炭酸ガス”の3つが必要なんです。

 ここで、ポイントです。植物は、炭酸同化作用を行なうために“予め”水を吸っておくのではないのです。結果として、水が欲しくなるのです。分かりますかぁ?
 炭酸ガスを吸って光合成が行なわれると、酸素が気孔から放出されます。更に大きいのは、葉っぱから自然に蒸発する水分です。つまり、日光にあたって温度が上がった葉っぱからは、大気中に常に水蒸気の形で“水”が放出されるのです。芝生にサランラップをかけておいてみてください。下側が曇ります。(もちろん、土壌水分の蒸散のせいもあるんですが・・)

 植物は、葉っぱから水蒸気の形で水分を放出すると、体の上の方が水不足になります。上の方が水不足になれば、その不足分は下から吸い上げます。下(茎や根っこ)が今度は水不足になりますから、最後に、根っこが外(土壌)から、水分を取り込みます。
 つまり、光のあたる昼に、上の方で水不足が起こり始めます。それを下の方が補うのは、その後です。では、“その後”が夜かと言えば、それは難しい? 夕方かもしれないし、午前中の活性が高ければ、あるいは午後2時くらいから始まるかもしれない。そのときどきの条件や、もちろん植物の種類や気候によります。私が、どっちでもいいような気になってきた訳が分かっていただけたかしら。
(これを明快に論断される先生は、いらっしゃると思います。私がその方や、その著書・学説を知らないだけです。すみません。勉強不足で・・・)

解説=シバの穂
 シバはイネ科ですので、やっぱり穂を出します。水稲はその穂につく実が実るのを待って稲刈りをしますよね。それは、実=種に期待するからです。水稲の種には、食用という重要な役割があります。しかし、芝生のシバの種は、あまり期待されていません。現実にはね。
 芝生、特にコウライシバのような種類は栄養繁殖と言って、種をまくのではなく、植物のカラダの一部を地面に植え込むことでの繁殖方法をとります。まぁ、挿し木みたいなものかしらね。
 だから、種(=穂)を切りとってしまうと、芝生が衰退するのではないか? っていう心配はありませんよ。

図解=シバの穂




2.生育環境

解説=土壌の問題@
 植えたシバが、スクスクと育ってくれる土壌とは、どんな土のことでしょう?
 一般家庭で注意することは、“軟らかい土”に尽きますね。

 専門的なことを言いますと、三相分布という考え方があります。土の中の、“ほんとの土の部分(=これを固相と言います)”と“空気のところ(=これを気相)”“水分(=これを液相)”の3相が適当な状態にないといけません。

 自宅を新築したタイミングで庭を芝生になさる方が多いようです。でも、ご自分でシバを植え付けるには不適当な場合が多いだろうと、私は想像しています。大工さんがひっきりなしに踏みつけたり、トラックが駐車していたところが庭になっていることが多いでしょう。そういうところの土は、一般的には気相が減って固相が多くなっています。

 そうなると、張り付けたシバの細い根っこが伸びて行きにくいのです。こういう場合は、たとえ活着(根付くこと)しても、元気のないシバになってしまう可能性が非常に高いでしょうね。これを未然に防ぐためにも、張り付ける前に“耕す”ことが最も重要なのです。



解説=土壌の問題A
 土壌の問題@で説明したのは、土壌の後天的な性質です。ここでは、先天的な性質を説明しましょう。

 土壌=土(厳密にはイコールではないんですよ)は、何でできていると思いますか?

 平たく言うと、“粘土と砂と石が混ざったもの”と言えます。子供たちが図画工作で使う“粘土”は、合成樹脂が混じっているものがあります。自然界にある粘土も、見た目や触った感じは、あれとほとんど一緒です。乾くと固くなる性質も一緒です。いかにも、「植物が生きていくには都合が悪そう」って感じじゃないですか?

 そうです。土の中に、粘土質の割り合いが高くなると、性状がどんどん“図画工作の粘土”に近づいて行って、シバの生育に向かなくなってきます。“固い”と“水はけが悪い”という二つのマイナス要因を抱えます。

 どうしたら、粘土分の多少が分かるのでしょうか。方法は意外に簡単ですよ。その土を手でほじくってみて、お寿司のシャリほどの形に丸めてみてください。手の平の中でギュッギュって握ってみて、ポンっと机の上に放り投げてみてください。形が崩れてしまったら“セーフ”。ほとんどシャリの形のままだったら、粘土分が多いと見ることができます。

図解=土壌の透水性



解説=草地化のメカニズム=「よくわかる芝生管理」に飛ぶ
 きれいな芝生だったところが、ある日、突然、雑草地になってしまうことはありません。徐々に雑草が増えていくのです。ですから、その段階毎に打つ手はありますよ。

解説=難しい同定
 こういう仕事をしていると、つくづく「難しいものだなぁ」と思うことがあります。シバの病気についての研究論文を読むとき等です。研究が進めば進むほど、病害や薬剤の分析は細分化されていきます。昔は“葉腐れ病”と一言で済ませていた病気も、“なんやらかんやら擬似葉腐れ病”とか難しい専門用語で呼ばれるようになってきました。

 同時に、それが何という病気なのかを調べること(これを“同定”と言います)も簡単には出来なくなってきました。偉そうな顔して、こんなHPを書いている私ですが、病気の同定は全くできません。これには深い知識と多くの経験、相応の設備が必要です。少なくとも、顕微鏡は必須なのです。私も、「これは、なんやろかな?」と思ったときは、近くの研究機関や薬剤メーカーの研究所などにお願いしています。

 “雑草”なら、たいていは形・姿を見て分かります。しかし“病害”は目に見える症状だけでは、絶対に同定できません。ですから、「これは、なんちゅー病気でっしゃろ?」なんて、写真を送ってこないでくださいね。

図解=病害の様子


解説=暑さの種類
 一番、分かりやすいのは“気温”でしょうね。あと、日差しが強すぎるのも、同じように気温が上がることによる害を生じさせます。
 地温が上がる害もありますよ。根っこが参ってしまう。そのカラカラに乾いて、地温が異常に上昇したところに、散水してしまうと今度は、熱せられた“水”、そう水温の問題が発生します。

図解=輻射熱


解説=地球温暖化?
 最近の暑さは地球温暖化によるものですか? 本当? 私はよくは分かりません。
 ヒートアイランド現象という言葉を聞いたことがないですか? 昔、私たちが子供だった頃には、いくら暑くても、せいぜい33度くらいのものでしたよね。それが、最近では。38や39度に平気でなります。地球全体もそうですが、都市では特に気温が上がっています。

 ヒートアイランド現象とは、都市で、夏場の気温が異常に上昇、熱帯夜が続いたりする現象で、都市に緑や水が失われて行った結果のものです。

75%は、緑による大気の冷却作用の喪失
25%は、人工排熱により大気の加熱作用
が原因とされています。



解説=ウンカの害
 ウンカは芝生にとっても、あまり歓迎すべきものではありません。彼らは、吸汁性の害虫と言います。なんとなく想像できますよね、どんな被害が出るのか・・・。
 吸汁性とは、読んで字のごとく、虫が、植物の樹液(草でも“樹”液と言うのかなぁ?)を吸って、その吸い口から先端を枯死至らしめる、というものです。夏になると見られる被害です。

 しかし、芝生に発生する各種の害虫の被害の中で、一番イヤなのは、幼虫が根をカジルことです。成虫が、葉から汁をすったり、葉をカジったりするのは、根っこをやられることに比べれば、あまり心配していません。

 事実、私たちの管理でも、ウンカ(吸汁性の代表格)には、特には対策をとりません。早い話が、「ホッタラカシ」? 

 ウンカとは、“ツマグロオオヨコバイ”とか“○○ヨコバイ”とかいった名前の小さな虫です。形は“セミ”に似ています。それもそのはず。ウンカとセミは“半翅(はんし)類”といって親戚です。もともとは同じ仲間です。口がストローのようになっていて、突き刺しては中の汁を吸います。セミも樹液を吸いますが“害虫”扱いはしませんね。悪いヤツではないの? でも、何年も地中にいるときは、何を吸って生きてるの? そうです。セミだって、ちゃーんと根っこから樹液を吸ってるんですよ。それでも悪者扱いされない不思議な動物ですよ。

 そうそう、もう一つ。姿がセミにそっくりな“悪者”が居ました。
 ・・・ “バルタン星人”・・・。


 



解説=各種の虫害
 同じように樹液を吸って生きているのに“ウンカ”は害虫だけど、“セミ”を害虫扱いする人はいない・・。害虫と呼ばれる虫は、どうして“害虫”になってしまうのでしょう。何をすれば、立派な害虫と呼ばれるのでしょう?
 被害の種類をベースに、“害虫の害虫タル所以”を検証してみましょう。

・シバの根っこを食害・吸汁するもの
  コガネムシ、ケラ、メイガ類ほか

・シバの茎葉を食害するもの
  ガガンボ、イナゴほか

・シバの茎葉の汁液を吸害するもの
  カメムシ、ヨコバイ(ウンカのこと)、カイガラムシほか

・芝生に土の堆積や穴を作るもの
  アリ、ミミズほか

 (新版/原色図鑑・芝生と病害虫と雑草=全国農村教育協会発行より)
といったように分類できます。
まぁ、家庭では、どれもそれほどには気にしなくてもいいような気がしますが。

解説=害虫の“好み”
 害虫にも好みがあります。害虫と呼ばれる虫たちは、手当たり次第に何でもかんでも食害するのではありません。

 公園を管理していて気になる害虫に、ポプラを食い荒らす“アメリカシロヒトリ”やサクラを食い荒らす“モンクロシャチホコ”という蛾がいます。共に、幼虫が葉っぱを食べます。木々はもう、すっ裸にされます。サクラなんて、可哀想なもので、モンクロシャチホコに裸にされた後に、しばらくしたら春かと思って花を咲かせますよ。そう、狂い咲き!

 でも、アメリカシロヒトリもモンクロシャチホコも、その木の足元に無限に(彼らにとって)広がるシバには見向きもしません。

 ですから、園芸店へ行って「殺虫剤を下さーい」って、あんまり関係ないような殺虫剤を買って来てもだめですよ。「シバの下の土の中にいる、スジキリヨトウの幼虫を殺すクスリをください」って、はっきり言ってください。
あ、でもその前に問題が。
あなたは、シバの下に、“なんという害虫”がいるか、それが分からないんですよね・・・?

図解=毛虫による食害
 
 


解説=キノコやコケ、そしてワカメ?
 キノコは、専門的に言いますと、担子菌類の子実体と言います。キノコは、植物で言うところの“茎や葉”ではないのです。
 巨神兵を積んだトルネキアの大型飛行船が墜落して、回りに胞子が飛び散ったじゃないですか?
 で、風の谷では、木々が侵されていって、村人達が感染した胞子を焼くのです。だいぶ経ったある日、残っていた胞子が大量の瘴気を発していました。村人は根っこにナタを入れて驚きます。

 「ダメだ、こんなところにまで『キンシ』が来てる!」

おおばば様は言いました。

 「焼くのじゃ。手遅れになると谷は腐海に飲み込まれてしまう」

ネチャーとした、白い糸を引くような映像が記憶にないですか?

 まぁ、芝生では、そんな極端な事態には発展しませんが・・・。そう、あの種類のものは菌糸が体なのです。菌糸が、植物で言う“茎や葉”にあたり、キノコは、どうでしょう、“果実”みたいなものかしら? ですから、実がならないようにするには、もと(菌糸)をやっつけなくてはならないのです。

 で、菌糸とは、シバの体とは別に、(シバと分かれて)生息しているのではないのです。菌糸は、シバの体の中に生息しているのです。まぁ、キノコやワカメに負けないよう、シバの体を元気にする、って方法がありますが・・・。
 ごめんなさい。ぜんぜん答えになってなかったぁーー。

図解=キノコ
 

 キノコは、担子菌類という菌類がシバの体に取りついて起こるものです。担子菌類の生活史の中で、胞子や菌糸などの次の時期に子実体という時期があって、これがキノコとなって地上に出てくるのです。
ですから、キノコをぬきとっても、菌類の体本体が残っているので、決して死ぬことはありません。

 ですが、菌類によって、子実体を形成する時期や気象条件などは決まっていて、いま、盛んに出ているからといって、これが年がら年中でてくるというものではありません。しばらくして、気温と湿度の関係が子実体の形成に適さなくなってくると出なくなります。

 これを元から絶つには殺菌剤が必要ですが、なかなかご家庭の芝生の規模で使い切れるような小型のパッケージが売られていないのが現状です。どんなに安全で効果のある殺菌剤であっても、普通には(一般の園芸店では)売られていなくて、しかも一旦、購入できても、ひとたび封を切ると何千m2もの芝生にまく量が入っていて、とても有効期限内には使い切れないのです。

 肥料をしっかりやって、芝刈りをキチンとしていれば、芝生自体が元気になって、キノコの勢いを相対的に抑えることができます。



3.維持管理作業


 

解説=芝生管理の基本
 このHPで私が基本としているスタンスは、「元気なシバを育てる」です。これは、「解説=作業の重要性と優先順位」でも言いました。

 人間が、ご飯を食べないと生きていけないように、シバも“何か”を食べないと生きてはいけません。特に、“シバ”と違って“芝生”の場合はなおさらです。芝生は“シバだけ”が“たくさん”しかも“旺盛に”生存している場所を言います。こうなると、一時に大量の“食事”が必要になります。生存競争が激化するからです。

 ですから、人間にとっての“ちゃんとした食事”のように、芝生には“肥料”が必要と言えます。
 これは、「よくわかる芝生管理」の“なぜ肥料をやらなければならないの”を見てください。



解説=芝生管理のカレンダー
 私が行なっている公の施設としての公園の管理場面では、だいたい、このカレンダーのようなイメージで、作業種毎の重要度と優先性を考えています。

 これは、「その公園のカレンダーを一般家庭のレベルに当てはめてアレンジしたらこうなった」、というような感覚で受けとめてください。芝生管理に取り組むスタンスが違えば、メニューはどのような形にでも変化するだろうと思います。

 このカレンダーの掲載は最後まで躊躇われました。各方面からの指摘の嵐を覚悟してアップロードします。
 
 

図解=芝生管理のカレンダー



解説=全面貼りと部分貼り
 一般的に、シバ(コウライシバやノシバ)は横へ伸びる性質を持っています。匍匐茎という器官を伸ばして、横へ横へと這って行きます。ですから、買ってきた座布団大のシバの苗で、庭全面を覆わなくてもいいのです。1〜2シーズンあれば、十分に埋まっていくものですよ。かえって全面に張り付けないほうが、成長していく姿を見るという楽しみもあるし、価格的に安くあがります。

図解=部分貼り

よくかる芝生管理「匍匐茎について」へ飛ぶ



解説=作業の重要性と優先順位
 専門的に細かな話をしますと、芝生の維持管理には多種多様な機械類が必要になります。動力噴霧器、目土散布機、穴あけ機、肥料散布機、シバ剥ぎ取り機、ローラー、スイーパー、パワーシャッチャー、バーチカルモア、ドロップシーダー・・・。
 まぁ、一般家庭では必要のないものばかりを列挙したと思ってください。
 家庭でシバを育てるときに最も留意しなくてはいけないことは、“元気な芝生”を育てることです。各種の芝生管理作業の中で、“元気な芝生”を育てるために必要な作業は、二つだけです。
・芝刈り
・肥料散布
 肥料散布には、機械は要りません。洗面器があれば十分です。

 なぜ、他の機械が要らないかと言いますと、必要となる優先順位が極端に低いからなのです。例えば、芝刈りをしなければ、芝生は維持できません。ボサボサになっては、それは「シバ」であっても「芝生」とは言いません。芝刈りには、代替作業がありません。

 除草剤や殺菌剤・殺虫剤を考えてみましょう。除草剤をまく代わりには、草むしりがあります。殺菌剤をまいても、病気になるときはなります。どんな病気にでも効く薬剤なんてありませんから。また、病気になって見苦しい状態も、芝刈りをサボってぼさぼさになった状況に比べれば大したことはないですし、全てのシバが必ず病気になる訳でもないのです。

 シバを食い荒らす害虫もいます。しかし、そんなもの、たいていの芝生に必ず生息しているんですよ。ゼロになんてできません。また、シバが少し変調をきたしたとしても、それが害虫のせいなのか、病気のせいなのか、肥料不足のせいなのか、日照不足のせいなのか、高温・乾燥の害なのか・・・、そんなもの判別も出来ないんです。もう、こうなったら、「気にしない」のが一番。だって、私だって、自宅の庭に殺虫剤をまいたことはないのですから・・・。



解説=“植える”は“植え替える”
 単純に考えても分かりますよね。暑いとダメだろうな・・・って。
 ここで、申しあげたいのは一つだけです。それは、
「はやる気持ちは分かります。でも、この夏は見送って来春にしましょう。」
 暑いと、たとえ植物本体が健全であっても弱ります。植えつけは、シバにとっては“手術”と一緒ですよ。だって、いままであった根っこを切られて、別の場所にポーンと置かれるのですから。一生懸命なんです。もぎ散られた手足を再生しようとして・・・。
 しかも、暑いと苗の“乾燥”も引き起こします。手足(シバにとっての根っこ)の再生には水分が欠かせません。そんな、暑いときに植えようなんて、無茶苦茶ですよ。

解説=シバの生理



解説=作業の適期
 よく勘違いする人がいるんですよ。“年間6回の芝刈り”とか“毎月の施肥”なんていうコメントに惑わされる人たち・・・。回数じゃないんですよ。

 たいていの作業はね、“行なうべきタイミング”を逸してしまったら、もう、遣り残した同じ作業を後から追っかけても無駄になってしまうことや、かえって害の方が強く出てしまうことがあるのです。とくに“施肥”は要注意です。「8月中下旬にやるべき」肥料をやり忘れていて、10月下旬になってから「あ、やらなきゃ!」ってあわててやると・・・。



解説=シバの購入
 まぁ、DIYのような店や、ホームセンターみたいなところでも売ってますけど・・・。野菜や魚と一緒で、一種の鮮度を要求します。干からびたものは止めましょうね。本当は、専門店に注文して、取り寄せてもらうのがいいでしょう。(でも、一般に売ってないような時期外れに注文してはいけません!)

 コウライシバの中にも、さらに細かい種類があり、“ヒメコウライ”などと呼ばれるものがあります。性質はあまり変らないとみていいでしょう。ノシバとコウライシバは、葉の巾・長さ、色が違います。ノシバはコウライシバに比べて、葉が大ぶりで、色が黄緑です。ちょっと、固い印象もあるかな? 維持管理の方法はほとんど変りません。


解説=土壌改良材
 読んで字の如く、植物の生育に不向きな土壌を“多少は改善してくれるかもしれない”材料です。目が覚めるほどに条件が良くなる訳ではありません。ほんの少しです。一般の家庭でこれを使用する目的は、おおよそ次の2点でしょうね。
@土に栄養分が少なそうなとき
Aなんだかカチンコチンみたいなとき
 どっちの場合も、素人には、果たして本当に栄養分が少ないのか、生育に適さないほどに堅密なのか等は判別できません。まぁ、半分、気休めだと思ってもいいでしょう。

 @の場合はFAQにあるように、鶏糞や腐葉土がいいでしょうね。これは、間違って入れ過ぎても、大した害にはなりませんから。

 でも、Aの場合は、HPで一般的には言えません。なかなか専門的な考察が必要なんです。よく、パーライト(軽石を砕いたようなもの)なんかを混ぜればいい、なんて簡単に言われますが、なかなか難しい問題なんですよ。


解説=芝生の養生期間
 公園を作るとき、最初にシバを張った年は、利用者を芝生に入れないのが普通です。植えたシバが活着(根付くこと)するまでは、利用者に踏み荒らされることを防がねばなりません。この期間を養生期間と言い、生きものであるシバを大切に育てていくにために必要な措置です。これは、家庭でシバを植えるときにも当然、必要になってきます。

 ですから、犬小屋の前なんかが剥げてしまったからと言って、植え替えるのにはあまり意味がないのです。もとの木阿弥? 養生期間を設定できないようなところでは、植え替えは失敗に終ります。
 公園ができて、いつまでたっても「芝生に入るな」の看板が出ているのは、また別の理由でしょうね。管理事務所へ行って、「なんでやぁ?」って聞いてみましょう。

図解=もとの木阿弥

 また、建物の北側でいつも日陰になっているところや、人家の出入り口などで、常に人に踏まれているようなところでは、張替えは無駄とみるのが妥当な場合が多いでしょうね。

図解=常にかかるストレス


解説=凸凹の害
 ゴルフ場のような、なだらかで大きな起伏は見ていても気持ちがいいです。しかし、家の庭程度の広さの中にある凸凹は、ちょっと意外な害が出てきます。

 芝刈り機のタイヤが凹んだところに落ち込んだとき、その分だけ刃が下がってしまうのです。刃が下がると、そこだけ刈高(地面と刃との間の間隔)が短くなりますよね。そうすると、そこだけが軸刈りになってしまうのです。

 水が溜まるのでは? とも思いますよね。でも、雨後に不快感を感じるほどの水溜りの原因は、凹みのような形態的な問題よりは、その土壌の水はけが原因の場合の方が多いような気がします。そして、こっち(水はけが悪い)の方が、ずぅーっと性質がわるい・・。



解説=芝刈り機の磨耗
芝刈り機が新品だったり、整備がゆき届いていると起こらないのですが、“刃の磨耗”が引き起こす葉っぱの“白変”は、けっこう見られます。

 花壇に植えたベゴニアだとかインパチェンスなどの比較的軟らかくて大きな葉っぱで実験してみてください。葉っぱを、カッターナイフで「スパっ」と切りましょう。横の葉は、ペンチで「グシャ」っとつぶしてみましょう。数日したら、明らかな違いが出ますよ。ペンチのほうは、つぶれた組織が褐変して見にくい姿を晒しています。

 芝刈り機の刃が磨耗してくると、刃先が“丸く”なります。この“丸い”刃先を高速で回転させると、一応、かたち上は芝刈りができるのですが、葉は、「切れた」のではなく「つぶされた」状態になるのです。シバの小さな葉であっても、先の方の僅かな組織がつぶれただけで、芝生全体は“白っぽく”見えます。

図解=芝刈り機による白変



解説=軸刈りについて
 シバが伸びすぎて、葉っぱも茎も長くなってしまったところを芝刈りすると、長く伸びた茎の“葉っぱのついていない下の方”だけが残ります。これを“軸刈り”と言います。

解説=軸刈りの弊害と光合成=「よくわかる芝生管理」へ飛ぶ

 しかし、軸刈りの弊害を逆手にとると、こういうことも可能です。お勧めはしませんが・・・・。

図解=軸刈りは白くなる


解説=事故?
 雑草に負けたとか、病気にやられた等自然の力以外の原因が関わる不調もけっこうありますよ。
・芝刈り機に給油しようとして、ガソリンをこぼした(絶対に枯れる!)
・芝生の上で肥料袋を開封したら、少しこぼれた(そこだけ緑に盛りあがる!)
・目印を立てずに肥料散布をした(緑の帯ができる)
・目印を立てずに除草剤をまいた(草が固まって生えてくる)
・いいかげんに目土をまいた(凸凹ができる)

図解=ガソリンをこぼすと
図解=肥料散布のムラ
図解=誤って肥料を落とすと


 
 


解説=縁刈りの重要性
 カンボジアのアンコールワットでしたっけ? だんだん崩れてきて修復が追いつかない遺跡。私は、シバが“あらぬ所”へ進入しているのを見ると、いつもあの遺跡を思い出します。
「あぁ、こうして植物は石をも穿つのだなぁ」ってね。
 でもね、南洋の樹木と違ってシバは、石やコンクリートまでをも崩す力はないみたいです。公園の管理をしているとよく分かります。園路の縁に、ちゃぁーんと縁石が設置されているところでは、シバは園路に進入してきません。

 しかし、縁石の設置がなく、アスファルトが直に芝生と接しているともう大変。そのアスファルトは、やがて芝生になってしまいます。これは、断言できます。

図解=アスファルトに進入
 

 これを防ぐには、アスファルトとの境のシバをこまめに切ってやるしかありません。アスファルトや“シバに進入されたくない舗装”との境に、常に2センチくらいの隙間を設けておくと安心ですよ。

 TDLやUSJへ行ったら、芝生を見てみてください。端っこが、それはもう、きれいに切りそろえてあります。

図解=TDLとUSJ



解説=法面緑化
 土木工事の中に、“法面緑化”工事があります。山を切った斜面が崩れてこないように、何か植物を植えるのです。“緑化”と言いますが、実は“緑色にする”ことが本来の目的ではありません。土が雨で流れ落ちることを、植物の“根っこ”に防がせるのが目的です。

 “スジ芝”という言葉があります。植物学的なシバの種類の名前ではありません。ノシバなどを、斜面に“筋(すじ)”状に植えることです。シバは横へ伸びる性質がありますから、筋状に植えたシバもやがては斜面全体に広がって、その斜面が雨で崩れてくることを防ぐのです。

 しかし、現状では教科書通りに進んではいません。法面緑化の多くは公共的な事業です。斜面が崩れないように“緑化工事”(=植えつけるところ)までは工事しますが、そのシバを維持管理していくための予算までは、なかなか手が廻らないようです。ですから、植えたシバは、やがて雑草に負けて、“芝地”ではなく“雑草地”になってしまうことがほとんどです。でも、役所はそれでいいと考えているようですよ。だって、シバだろうが雑草だろうが、法面を保護する効果は変りませんから。

(ほんとうのところは、知りません・・)

解説=多いことの害
 何でも、「過ぎたるは、及ばざるが如し」ですよ。特に、肥料や除草剤はね。あと、目土も多すぎると害が出ます。多すぎても害が少ないものは、芝刈りと散水。この他の作業は、“適当な時期に適当な分量”を間違えると、たいていはマイナスの現象が起こります。
 肥料の害は、中に含まれるチッ素分の過多が、細胞を膨軟にして引き起こす各種の病害や、葉身の軟弱化による踏圧ストレスへの抵抗性の低下(要は、ひ弱になるってことね・・)を引き起こします。



解説=植栽基盤
 日比谷公園のように、昔からある公園。神社やお寺。古い並木道。老舗のゴルフ場。もちろん近くの里山・・。これらに共通して「ある」ものは何でしょうか? ヒントです。逆に、それが「ない」ところは、比較的新しい公園や道路。新興住宅団地の公園。最近できた土手の公園。かっこいいビルの外構。さぁ、何でしょう?

 答えは、“大きな木”です。「そりゃそうだろう。最近できた公園に“大きな木”があるはずがないじゃないか?」おっしゃるとおりです。でも、本質は違うのです。新しい公園には、“大きな木”がないばかりでなく、“大きくなる木”もないのです。「いや、近くの新しい公園には、ケヤキが植わっている。今は小さいが、将来は大木になるはずだ。」これも、当たっているようで、実は、期待どおりにならない可能性が非常に高いのです。

 どういうことかと言いますと、“本来は大きくなるはずの木”を植えてはいるのですが、その木が“大きくなるための土壌を作る”ことが、比較的なおざりにされていると、管理サイドの人間は感じているのです。公園を建設するサイドの人たちは、手を打っているのかもしれません。しかし、土壌を適正に作ることが、あまりうまくいっていないことが、街のなかのあちこちに“結果”として出ているとしか、考えようがありません。


 ハイキングや登山を経験された方は、“キジ打ち”に行ったことがあるでしょう? そう、用足しですよ。登山道で用を足すときは道から逸れますよね。そう5mくらい藪の中に入らないことには、落ち着いて用を足せません。そのあたりの土の感触を覚えていますか? クツでも簡単に穴が掘れるような“ホコホコ”の柔らかい土です。ああいう土でなければ、“大きくなるはずの木”は本来の大きさまで成長できません。

 みなさんも、ご自宅にシバを植えようとするときは、まず、“よい土”これが基本ですよ。カチンコチンの固い土は、最低限、耕しましょうね。
 

図解=植栽基盤の重要性
図解=土壌試験(硬度)
図解=土壌試験(透水性)



解説=芝刈り機について
  次のようなことを考えてみてください。

@芝生は広いか?
 100u以上は「広い」と言えますね。エンジン付きの機械が必要でしょう。

A自分の根気?
 芝生管理を、将来的にも「イヤにならずに」やっていけそうですか?

 何万円も投資するのですから、ずぅーっと作業を続ける根気がなくてはね。でもね、育ってくると、愛着も沸いてきますからご安心。

 で、「購入する!」と意思を固めたら、次はどんなタイプの芝刈り機を買うかですよ。
 タイプ別の特徴は表のとおりです。私の感覚からは、そこそこの面積があるなら、エンジン付きのロータリーモアでしょうね。10万円台であるはず。ただし、洋シバには向きませんよ。

図解=ロータリーモアとリールモア
 


解説=工事と管理
 私の職場は、県庁の土木部所轄の外郭団体です。ですから、廻りには土方屋さんが大勢います。土方の仕事(=たいていの公共事業)では、工期が迫ってくれば“突貫工事”が可能です。芝生の維持管理も、同じく公共の事業なんですが、こちらは“突貫管理”が出来ないのです。

 “できない”は語弊がありますよね。“意味がない”もしくは“かえって害になる場合がある”とでも言っておきましょうか。

 たとえば、年間に7回の芝刈りを予定していて、8月下旬で3回しか施工していなかったとしますよね。その後に、慌てて工期内に4回の施工をしても、変ですよ。だって、それまでのシバが良く伸びる時期にたった3回しかしてないのに、その後のシバが余り伸びない時期に4回も刈るのは不合理でしょう?

 また、8月下旬に施工予定であった施肥が、遅くなって10月下旬なんかになってしまったら、むしろ、害の方が大きく出てくるかもしれませんよ。

 とにかく、管理はタイミングが重要なのです。“泥縄”はいけません。

解説=芝刈り後の白変
 刃が研ぎ澄まされていて、“スパっ”と切れた場合は起こりません。でも、刃が磨耗してくると、“スパっ”ではなく“グチャ”っと、組織をつぶしたようになります。そうすると、そこが乾燥して白くなることが多いですね。シバは葉っぱが多いですからね、先がちょっと白くなるだけで、芝生全体が白くみえるのです。
 でも、害虫が汁をすったり、病害でも白くなったりはしますけど・・・。

解説=芝刈り機の磨耗

解説=事故?



解説=芝生の縦じま
 テレビに映るような公式戦を行なうグランドでは、たいていは何百万円もする芝刈り機を使っています。そのほとんどが、リールモアというタイプです。刃の前後に直径10センチ弱の鉄の丸いガイドローラー(車輪のイメージではなく、細長いローラーのイメージ)が付いています。これが支えになって、刈高(刃と地面との距離)を一定に保っているのです。

 その二つのローラーに押し倒されたシバは、圧力がかかって斜めに寝てしまいます。芝刈り機は、グランドを行ったり来たりして作業をします。そうすると光の当たり方によって、倒れた方向の違いがはっきりと色分けして見えるという訳ですね。

 Jリーグの試合を行なうようなグランドでは、最近は寒地型芝草が植えられているところが多いようです。寒地型芝草(いわゆる洋シバ)は、コウライシバなどの暖地型芝草に比べて軟らかいのです。しかも、少し長めの刈高で管理するのが一般的で、ああいう現象が顕著に出るのです。
 普通の家庭で、あの縦じまを出すのは、ちょっと難しいかもよ!

図解=ロータリーモアとリールモア

図解=サッカーグランドの縦じま

* と、以前は、このように書いていました。
  しかし、家庭用の芝刈り機でも、
  これが可能なもがあるそうなのです。
  詳しくは、左のメニューで掲示板から、
  平成13年5月8日あたりをご覧


  
 


解説=肥料の成分と散布量
 この問題は難しいですよ。はっきりしたことは言いかねます。しかし、一般の方にはもっと分からないだろうと思うので、私なりに把握していることを荒っぽく紹介しておきましょう。

 肥料の成分は、3要素の比率で表します。3要素とは、チッ素・リン酸・カリです。昔、習いましたよね。で、製品としての肥料には、この割合が表示されています。例えば、“8-8-8”とか“15-10-7”とか・・。最初の“8”と“15”が、チッ素の含有量です。

 専門書にはいろんなことが書いてあります。“ゴルフ場のフェアウエイでは、年間チッ素の総量は○○グラム”とかね。でも、ここでは、次のように表現しておきましょう。

 “8-8-8”とか“10-10-10”、せいぜい“15-15-15”といった最初の数値(すなわちチッ素の量)が“15”以下の肥料を、1回・1uあたり、50グラムくらいまきましょう。80グラムを超えると、1回の散布量としては多すぎると思います。チッ素以外の数値は気にする必要はありません。

 もう一度言っておきます。荒っぽい考え方ですよ、これは。

解説=肥料の性質と散布時期の問題=「よくわかる芝生管理」へ飛ぶ

解説=凸凹の害

解説=どうしてわざわざ砂をまくの?=「よくわかる芝生管理」へ飛ぶ

解説=サッチの弊害=「よくわかる芝生管理」へ飛ぶ

解説=芝生の新陳代謝=「よくわかる芝生管理」へ飛ぶ



解説=苦労する順
 やっぱり、草むしりが一番大変でしょう。その次は芝刈りかな。植えた最初の年は散水も大変です。そうそう、最初の年は、水まきが一番大変かもしれない。植えた年の夏なんて、毎日やらないとだめですよ。

図解=伸びる雑草



解説=除草剤の上手な使い方
 公園の芝生管理の中で、雑草対策の基本はこれです。
 「生えてこないようにする」
 そのために、雑草の種が発芽しないような薬剤を予め散布しておきます。このときまく薬剤を“土壌処理剤”と言います。生えてきてしまった雑草には“茎葉処理剤”をまきます。これは、草にかけて枯らせるのです。どちらも“除草剤”としてくくられています。もう少し大きくは、“農薬”としてくくられています。
 なるべく農薬の使用量を抑えたい気持ちは、私にももちろんあります。でも一般的には、こうして予めまいておく方法が、結果として、散布総量を低いレベルで抑えることができるのです。

図解=雑草は生えてくる

図解=冬に生える雑草


解説=殺虫剤の施用
 行政機関が発行する“ゴルフ場の○○防除指針”とかいう資料が各県にあるはずです。それを見ると、どういう害虫や病気がいつ頃発生するか、また、それらをいつ頃駆除すれば良いかが“指針”として記載されています。しかし、一般の方がこれを見ると、混乱しますよ。もう、シーズン中は、何らかの病害や害虫が必ず発生しているのですから。薬剤をまこうと思えば、毎日散布しても追いつかない・・・。

 害虫駆除では効率的な方法として、幼虫を叩く方法をとります。成虫の寿命は、一般的には幼虫でいる期間に比べると短いのです。セミのように10日も生きていないものも珍しくありません。幼虫は月単位で生きています。ですから、幼虫を叩くのです。成虫めがけて散布しても効率が悪いんです(*)。

 話しは違いますが、エイズが、なぜ、あれほどに蔓延しているかご存知ですか? その大きな原因の一つに、潜伏期間の長さが上げられます。伝染したら1日で発症するような病気は、あまり広がりません。“移してしまう”時間がないのです。潜伏期間が長いと、自分はその病気に罹っているのを知らずに“移して”しまうでしょう? だからね、害虫も“潜伏中”を狙って叩くのですよ。
(*:もちろん公園では、成虫を対象とした効率のよい防除方法はあります)



解説=秘密の退治方法
 木でできた、風車(かざぐるま)のようなものをご存知ですか?

 畑の端っこに立ててあるでしょう? 大都市近郊では、あまり見ないかなぁ。白っぽく塗装してあって、赤いラインが入っている。あれは、風で廻って、微かな音を発しています。「カタカタカタ・・」。あの音(振動)を、モグラが嫌って近寄らないのです。

 でもね、モグラも、そこにいるだけでは別に害はないんですよ。芝生に土を盛り上げるから怒られるんです。可哀想に・・・。モグラがいるということは、そこに彼らの主食とするミミズがいるからなんですよ。ミミズがいるっていうことは、植物にとっても“いい土”である場合が多いんですよ。

図解=偉大な土建屋=モグラ

 
 


解説=シバ焼きに期待する効果
 後楽園では“芝焼き”と言いますし、奈良の若草山では“山焼き”と言って、春になると、芝生に火をつけて燃やします。今では観光的な意味合いも大きいようですが、もともとは、植物維持管理上の合理性から編み出された手法です。芝生に生息する害虫の駆除や、病害に対する消毒効果、萌芽(芽吹き)時期を揃える効果などがあります。

 岡山市のHPによりますと、シバの枯葉に、投げ捨てられたタバコからs引火したこともあったらしく、事前に、枯草を人為的焼いておくという理由もあるらしいです。
 
図解=後楽園の芝焼き




4.薬剤



解説=農薬への批判と不安
 私は、“農薬”を挟んで二つの勢力があると感じています。一つは、農薬は危険なものであるから使わない方がいい、というグループです。もう一つは、農薬は、それほどには危険ではない、とする人たちです。いずれのグループからも多くの専門書が出されていて、それぞれ読むたびに、どちらにも「うぅーん。そうだなぁ」と納得できます。

 農薬は怖いもの、危険なものという通説がありますよね。「トキが絶滅したのは、農薬のせいだ」「農薬を使わなくても農業はできるはずだ」などが象徴的です。一方、「農薬も風邪薬も、量を過ごして服用すればどちらも危険」「タバコには、ニコチンのように『毒物』が含まれるが、ほとんどの農薬は『普通物』でできている」との主張があります。

 私はと言えば、「農薬が生理的にイヤな人たちの、かなりヒステリックな拒絶反応もどうかな」とも思うし、かといって、「農薬の安全性を殊更に強調する説に無防備で組するのもいかがかな」といった“比較的、中立的なスタンス”だと自分では思っています。
 私は、なるべくなら、薬剤を使う量を減らしていかなければ、と思いつつも、今すぐに、全ての薬剤の使用を中止して公園管理ができるのか? と問われれば、「ノー」としか言えないのだろうなと思っています。その第一の理由は“経済性”でしょう。

 しかし、地球環境や人類の将来を本気で考えている方たちの書籍を読むと、経済性などという理由は、いわゆる農薬を使用しつづけることの理由にはなり得ないのだろうと感じます。

 私が仕事としている都市公園の管理場面では、除草剤などを適切に使用することでの予算体系が敷かれています。ですから、法令や基準を遵守して使用するスタンス(=芝生用として売られている薬剤を、そのクスリが示す散布規準を守ってまいている限りは、人体に重大な悪影響を直ちに引き起こすことはない、というスタンス)で仕事をすすめています。そんなに遠くない将来には、おおきな転換をしなければならないだろうな、という漠然とした予感をもちつつ・・・。

 この問題を深く議論するとページが足りませんし、このHPの趣旨から次第に離れて行きます。

 私が最近読んだ、反対派と擁護派の書籍を紹介しておきましょう。
■農薬批判サイドからは、
“除草剤の脅威”久慈力著(新泉社)

■農薬擁護サイドからは、
“農薬に対する誤解と偏見”福田秀夫著(化学工業日報社)


 みなさんは、どのようにお考えでしょうか?



解説=農薬の登録
 農薬を作って(開発して)、農薬として売るときは、とても膨大な審査を経ているらしいです。それは、きっと風邪薬なんかも同じなんでしょうね。
 簡単に言いますと、
@品質(酸性かアルカリ性か? 爆発したりしないか?)
A薬効・薬害(本当に効くか? 周辺の作物に影響ないか?)
B毒性(飲み込んだらすぐ死ぬのか? 長期服用が危ないのか?)
C残留性(土壌汚染などを引き起こさないか?)
D水産動物に対する毒性(下流の魚は大丈夫か?)
Eその他(チャやクワに影響しないか? ほか)
 で、もう一つ重要な視点があります。審査は、“対象物を限定して認める”ということです。風邪薬は“人間が罹る風邪に効く”として、胃薬は“人間が酒を飲みすぎたときに効く”として売られています。ペットの犬に少しだけ呑ませても、効くような感じはしますが、薬剤メーカーは、そんなことまでは保証してくれません。(でも、真っ先にペットにされているようなハムスターなんかで実験しているようですけれどね・・・)

 農薬は、たとえば、

「キャベツにつく、モンシロチョウの幼虫にめがけてまくクスリですよ」
等とアナウンスされて売られています。

 経験的に、そのクスリは「自宅のサクラにつくアメリカシロヒトリ」にも効きそうな気がするのですが、一応、それは表示できないシステムになっています。ですから、園芸店に行って、「芝生にいるミミズに効くクスリを下さい」って言っても、なかなか出してくれないかもしれません。なんとなく、別の薬剤でも効きそうなものは想像できるのですが・・・。



解説=薬剤の不活性化
 薬剤をまいてから、芝生に入ってもいいのはどのくらい経ってから? そうですね。3〜4日? 1〜2日? 一度、雨が降れば大丈夫なの?  

 薬剤が地面に落ちて、しばらく経つと、土壌微生物に分解されたり、紫外線などによって薬剤本来の作用性が不活性化していくとも言われています。そういう議論とは別に、“量”だけの問題からすると、理屈上は、たいていの場合が、その日でもいいような結果が計算されます。“理屈から割りだされる量”の問題としてはですよ。

 と言いますのは、基本的にはシバ専用として売られている薬剤は、“その使用基準”を守って散布されていれば、“安全”とされています。ここで、芝生の場合、“使用基準”の中で大切なのは、1uあたりに散布される薬剤“量”のことです。

 例えばね、芝生の庭でガーデン・パーティをしたとしましょう。おでんもメニューにありました。友人が、三角形のコンニャクを誤って落としてしまいました。今朝、除草剤をまいたばっかりでした。それを知っているのは家主の私だけ・・・。

 あなたなら、どうします? 
 (まぁ、パーティの日には散布はしないでしょうけど)

 この位の規模で体内にとり込まれる薬量だけが原因で、その摂取者が体に変調をきたすような薬剤は、絶対に認可にならないでしょうね。まぁ、「食べたくないな」っていう気持ちは、もちろんです。

解説=芝生管理で使用する薬剤の量



解説=毒性の強さ
 いったい、どのくらいの量が口に入るとヤバイのでしょうか?

 物質や薬剤が、そのもの自体としてどのくらいヤバイかを「毒性が強いかどうか?」というように表現します。それ(毒性が強いかどうか)を調べることを、毒性試験と言います。で、毒性試験には、たくさんの指標があります。一番わかりやすいのが“急性毒性”試験でしょう。「これだけ飲み込んだら(摂取したら)死んじゃう」というような感じです。その他には、発がん性試験や催奇形性試験、繁殖試験(後世代に影響するか)他があります。

 急性毒性試験では、供試した動物の半数が死に至る物質の量(ミリグラム)を、動物の体重(キログラム)当たりで示した数値で表します。これを“LD50”と言います。当然、数値が小さい方が毒性が強くなります。ちなみに、毒物・劇物取締法によって『毒物』とされているニコチンのLD50は、24です。食塩はだいたい3,000程度と言われています。



解説=芝生管理で使用する薬剤の量
 解説=毒性の強さで説明したとおり、急性毒性試験の値が小さい方が毒性が高いのですよね。公園の芝生管理でも使われることがある物質に“イソプロチオラン”という殺菌剤があり、このLD50は1,350とされています。

 仮にこれを、人間が摂取する場面を想定してみましょう。

 体重1kg当たり、1,350ミリグラムを飲み込むと、半数の人が死んでしまいます。体重60キロの人では、1.35×60≒80グラムの量です。卵よりすこし重いくらいの量です。水に溶かして散布された芝生に踏み入れて、おちたビスケット等に付着したであろう量と比較すると、万の単位での差が計算されます。

 でも、そんな量でこの問題を考えてはいけません。哺乳類がそれを口から摂取して“死んでしまう”ほどの量でなくても、相当に危ないのだろうな、というような感じ方が一般的だろうと思いますよ。

 なぜかと言いますと、科学技術は日夜、進歩を続けているのです。生物界と化学物質の関わりについては、まだまだ解明されていないことが多いと思います。つまり、現時点で「安全」とされていることも、実は、「まだ、その危険性が解明されていない状況」とイコールのことだってあると思うのです。

 


解説=薬剤の散布基準
 まぁ、殺虫剤と除草剤を間違えて散布してしまうような極端なことは別として、薬剤は決められたように散布しないと、効果が発揮できません。
 荒っぽく言いますと、5つのポイントがあります。
@ 剤のタイプと散布のタイミング
A 対象としている病害・害虫、雑草
B 1uあたりの使用薬量
C まくときの水量
D 水に混ぜる補助剤


@ タイプと散布のタイミング

 予めまいておいて雑草の発芽を防止するタイプなのか、生えてきた雑草に付着させて枯らせるタイプなのか。まいておくタイプの除草剤は、生えてきた雑草にかけても、全く効果がないものが多いですよ。反対に、枯らせるタイプの除草剤は、一般的には予防効果はありません。

解説=除草剤の上手な使い方


A 対象としている病害・害虫、雑草

 芝生に生える有名な雑草にクローバーとスズメノカタビラがあります。両方とも、芝生の表面に這うようにして成長するため、芝刈りだけでは駆除できません。スズメノカタビラ等のイネ科の雑草を対象とした除草剤には、クローバーのようなマメ科のものや、ヒメジョオンのようなキク科の雑草には効果が甘いものがあります。
 「何にでも効くクスリはないの?」
 でもね、まず、選択性といって、シバに安全でなければならない訳でしょう。その上で、あの草もこの草も枯らせる・・・。けっこう難しいみたいですよ。シバも枯れてもいいのであれば、たくさんありますが。

解説=薬剤の選択性


B 1uあたりの使用薬量

 少ないと効かないし、多すぎるとシバにも影響する場合があります。
C まくときの水量
 意外にこれが重要なんですよ。比較的少ない水量でOKなのは、除草剤の中の“茎葉処理剤”だけです。それでも、1uあたり、牛乳ビン1本分以上の水量は必要です。250〜300ml/uと言われています。土壌処理剤や殺菌剤・殺虫剤などは、もっと多い水量が必要なのが一般的です。1リットル/uくらい。
 考えてみてください。土の中に到達しなければならないんですよ。
 よく、降水確率を気にしますよね。あれは、「1ミリ以上の雨が降る」確率です。1ミリの雨ってどんな雨かご存知ですか? 全然たいしたことのない、平気な雨ですよ。その1ミリの降雨量を除草剤の散布水量に直すと、1リットル/uなんです。牛乳ビンの5倍以上です。まくとなると、けっこう多い量です。

図解=散布水量の重要性


D 水に混ぜる補助剤

 一般的に“展着剤”と呼ばれているものがあります。茎葉処理剤を散布するときに、水に混ぜて葉っぱの表面に薬液が付着しやすくするのです。普通、葉の表面には細かい毛が生えていて、水分をはじくので、こういう処理が必要なんです。
 土壌処理剤にも、土中にスムースに染み込んでいくようなタイプの補助剤(これも展着剤と呼んだりする)が必要です。

 


解説=いろんな薬害
 よく起こる薬害は、“濃すぎた”や“かけすぎた”でしょうね。
 「その木にかけてはいけないのに・・・」をやっちゃうと、大切な庭木まで枯らしてしまいます。

 広い意味では、田んぼに殺虫剤をまいていた人が、それを吸い込んで気分が悪くなったような場合も薬害といいます。薬害エイズの場合は、ちょっとニュアンスが違いますけど・・・。

 でも、芝生管理の場合は、“まいたもの”によって、シバ“にも”何らかの影響がでてしまうことを薬害と言っています。

解説=減農薬と無農薬=「よくわかる芝生管理」へ飛ぶ



解説=除草剤の選択性
 薬剤の開発が進むにつれ、その薬剤が効く対象としての生物種の巾が狭められていくと同時に、効果が的確になってきたような印象を私は持っています。
 大切なシバまでが枯れてしまっては大変です。シバは平気でも、その芝生に生えている雑草を叩くため、シバ“もろとも”かかっても安全な薬剤は、今では普通になってきました。

 こういうのを選択性といいます。でも、“非選択性”の除草剤も、たいていは同じ棚で売られています。気をつけないと大変なことになりますよ。

図解=クローバー

   解説=除草剤の上手な使い方

 


解説=農薬の安全性の基準
 「安全か?」って聞かれますよね。まぁ、私も仕事で使っていますから、「安全ですよ」と答えています。薬剤が安全だと言っていい場合には、“基準を守って使用するとき”という決まりごとがあります。これを違えると、“安全なもの”が“安全ではないもの”に変身してしまいます。

 それとは別に、重要な視点があります。それは、

・薬剤を構成している薬剤に、“毒性”があるのかどうか?
・その薬剤を使うことに“危険性”があるのかどうか?
ということです。

 “毒性”とは、この世界で言いますと、そのもの自体の毒の程度を言います。つまり、ニコチンという物質は、そのもの自体の“毒性”は、けっこう高い方に分類されます。ですからニコチンは、“毒物・劇物取締法”という厳しい法律によって“毒物”に指定されています。しかし、ニコチンは、使い方によっては、そんなに危険ではないと思えるのでしょうね。だって、「農薬は危険だ」って発言しながらタバコを吸っている人は、きっといるはずでしょう?

 “毒物”が、どれくらいの“毒”を含んでいるかは、ちゃんと指標があります。その指標を用いると、毒物であるニコチンの毒性は、毒物ではない食塩の100倍ほどです。しかし、食塩をたくさん水に溶いて呑むと死にますよ。

 法が定めた“毒物”であるニコチンは、タバコで少しずつ吸っている分には、すぐ死ぬほどの“危険性”はないでしょう。(もちろん喫煙の害は承知していますし、私はタバコを吸いません。)でも、法が“特に毒物に指定するほどでもない”とした“食塩”は、一時に多量に摂取すると、人命を損なうほどの“危険性”を発揮します。要は、“使い方”とも言えますが・・・。(*)

 (*)  農薬が安全かどうか、ということを考えるときは、「毒性が強いか」のほかに、「奇形を誘発しないか」とか「子孫に影響しないか」、「環境ホルモンのような動きをしないか」等の視点が必要になります。

解説=草むしりと除草剤
 芝生にまく薬剤ですから、安全でないといけませんよね。寝っころがるのですから。体につきますから。子供は、芝生に落ちたビスケットを食べるかもしれないし。まぁ、そんな心配をしている人は、まかない方がいいでしょう。

 でも、100uほどの芝生をお持ちで、草むしりが大変、とおっしゃる方の気持ちも分かります。公園の管理では、もっと広い芝生を扱います。作業員を頼んで、しゃがませて草むしりさせていたら、もう予算がいくらあっても足りません。

解説=どうして除草剤をまくの=「よくわかる芝生管理」へ飛ぶ



解説=除草剤の上手な使い方
 公園の芝生管理の中で、雑草対策の基本はこれです。
 「生えてこないようにする」
 そのために、雑草の種が発芽しないような薬剤を予め散布しておきます。このときまく薬剤を“土壌処理剤”と言います。生えてきてしまった雑草には“茎葉処理剤”をまきます。これは、草にかけて枯らせるのです。どちらも“除草剤”としてくくられています。もう少し大きくは、“農薬”としてくくられています。

 なるべく農薬の使用量を抑えたい気持ちは、私にももちろんあります。でも一般的には、こうして予めまいておく方法が、結果として、散布総量を低いレベルで抑えることができるのです。

図解=雑草は生えてくる

図解=冬に生える雑草


解説=ポジティブリスト制
 これまでは、食品(農産物)毎に「含まれてはいけない農薬」を指定していました。そう、ブラックリスト化していたんですね。 だから、ホウレンソウの出荷前には使用してはいけない農薬、みたいなものがあって、それは使わないようにしていました。それは、それでぜーんぜん、問題ないんですよ。「ホウレンソウから検出されてはいけない農薬」みたいなものは使わなければいいのですから。

 でも、世の中に出回っている農薬は、たーっくさんあります。たとえば、「梨の病気の特効薬」があります。これを、梨畑で大々的に散布していたとしましょう。リンゴや梨の畑では、自動車みたいな大きさの動力噴霧器という機械で、霧状の農薬を散布します。

 風のない日ならいいんですけど・・・・。風のある日には、その「梨の病気の特効薬」が、流れていって、隣の畑のホウレンソウに付着することが十分に考えられます。これ(薬剤が風に乗って流れていくこと)を、ドリフトと言って、ポジティブリスト制における大問題になっているのです?

 何が問題かって?

 これまでは、「ホウレンソウに含まれていてはいけない農薬」を決めていました。そう、ブラックリスト化していたんですね。だから、まさか、ホウレンソウにまくはずのない「梨の病気の特効薬」は、ホウレンソウのブラックリストには載っていないんです。これまでは、そういう考え方できていました。

 だから、ホウレンソウから、「梨の病気の特効薬」が大量に検出されたって、ぜーんぜん平気で出荷できましたよ。

 でも、ポジティブリスト制になると、「ホウレンソウに含まれていてもよい農薬」が決められてリスト化されます。これがポジティブリストですね。

 そうなると、その「梨の病気の特効薬」は、当然に、そのリストには含まれませんから、そのホウレンソウは出荷できなくなるのです。(ま、検出されれば、の話ですけどね)

 私たちのように、公園の芝生を扱う機関でも、気をつけないと、公園周辺の農家の方々に多大な迷惑をかけてしまうかもしれないのです。
 

更に詳しい説明はこちら

農林水産省のHP
GREENJAPAN研究所のHP
 



5.常緑芝 


解説=冬でも緑のシバ
 「隣の芝は・・・」なんて言いますよね。そう、芝生は“青い”方がいいに決まってます。これから芝生を植えようとしている人にとっても、それは魅力でしょう。

 でも、いま、このFAQを読み始めてくださった皆様に申しあげておきましょうか。
 ”日本で素人の方が手軽に育てられる“タイプのシバは、一種の落葉樹みたいなものだと思ってください。冬になったら、“青く”なくなるのが自然なんです。

図解=シバは落葉樹?
 

 で、“冬でも緑のシバ”っていう種類のものが、確かにあります。でも、それは、夏の暑さに弱いんですよ。枯れやすいんですよ。冬に緑でも、夏に茶色ではねぇ? 

 初めての人は、こう思ってください。悪いことは言いませんよ。

 “冬に緑のシバ”を“夏にも緑にしておく”ことが、意外に(とっても)難しい。

図解=グリーンだけ緑


解説=寒地型芝草を育てるための労力
 私が、「家庭で簡単にできるものではない」と言うからには理由があります。“芝生”と言うからには、年間に何回かの芝刈りをすることが前提です。伸ばしっぱなしでは、それは“シバ”であっても芝生とは言いません。(寒地型芝草の夏越し方法の一つには、“長く伸ばしておく”というものがあります。)

 多くの種類が、株の形をとって大きくなる寒地型芝草は、刈り込みに弱いのです。

 平たく言うと、暑さに弱い寒地型芝草を、どうやって“日本の暑い夏を越させるか”がネックになります。散水も十分に必要です。なにより大切なのは、そのシバが生育していくために障害となることを極力除いてやることです。

 もともと、軟らかい水はけのよい土壌を好むシバです。最適の土壌条件も提供してやる必要があります。これは、お宅を新築されたときに、建設業者たちが踏み荒らして、カチカチになってしまったところを、いくら耕してみたところで達成されることがない条件なのです。

 土壌の入れ替えなんて、家庭ではできないでしょう? しかも、コウライシバなんかではあんまり気にしませんが、寒地型芝草では、スプリンクラーは必須と考えていいでしょう。

図解=スプリンクラー

解説=匍匐茎について=「よくわかる芝生管理」へ飛ぶ


解説=簡単かどうかの問題
 「冬でも緑のシバが簡単に育てられるか」と聞かれたら、「難しいですよ」って答えざるをえないでしょうね。でも、それは、途方もなく難しい訳でもないんです。何て言いましょうか?

 コウライシバは、施肥と芝刈りをキチンとしておけば、そこそこの状態をキープすることが、それほどは難しくありません。しかし、寒地型芝草は、このFAQにも、いろんなところに書いてありますが、夏越しがネックなのは、間違いありません。特に、初めて芝生を貼る、って人にはお勧めはできませんね。

 しかし、腕に自信のある方は、試してみてもいいとは思いますよ。そういう方には、「ポイントを押えて頑張ってください」と言いたいですね。

 ・コウラシバのポイントは二つでOKです。→施肥と芝刈り
 ・寒地型芝草は加えてもう三つ。→散水と刈高、それと“いい土”

 最近は、夏越しといっても耐暑性のある品種が開発されていますから、ポイントを押えれば、あながち無理とは言えません。そう、いい土に播種して、スプリンクラーなどがあって、芝刈り機を調節して50ミリ以上の長さでの刈り込みができるようなら、大丈夫でしょう。



解説=オーバーシーディングの基本
 オーバーシーディングの考え方の基本は、こうです。
 「普通のコウライシバは、秋口から翌春までは休眠期に入って緑色を保持できない。だから、その間に、洋シバの種をまいて育成する。ただし、翌春には、後からまいた洋シバは人為的に枯らせなければならない。なぜなら、いつまでもそのシバをそこにおいておくと、もともとのコウライシバが圧迫されて衰退してしまうから。」
というものです。

 「コウライシバは、衰退したっていいんじゃないの?」
 そうですね。後からまいた洋シバが、夏にも頑張って青々としていてくれるんならね。(これが難しいのです・・・。)

図解=オーバーシーディングの基本

解説=2種類の方法
一口に、寒地型芝草を育てるといっても次の二つの方法があります。

・オーバーシーディングによって、冬だけ寒地型芝草を栽培する
・寒地型芝草だけを通年で育てていく

残念なことに、どちらもかなり難しいと言えます。その理由は、
 

・オーバーシーディングでは、
 初夏にトランジッションを的確に行なわないと、暖地型芝草が衰退して、どっち(暖地型も寒地型)も衰退して醜くなりやすい。


・寒地型芝草の単独育成では、

 盛夏の高温を乗り切る方法を的確に講じないと、寒地型芝草は夏越しできない。
 “冬でも緑のシバ”を目指して頑張っておられる方々には、なんだか元も子もないような言い方ですね。いくつかのポイントを押えれば、極端な状態を回避することは可能です。しかし、あまり芝生管理の経験のない方が“寒地型芝草の美しいターフ”を望まれても、ちょっと難しいかな? と思います。そのような方は、2〜3年、コウライシバでやってみてからがいいような気がしますよ。



解説=夏季の(暖地型)単独育成
 
 オーバーシーディングにおいては、意外かもしれませんが、せっかく前の年の秋に種をまいて、冬の間中、美しい景観を提供してくれていた寒地型芝草を、これから夏に向かうという時期に、わざわざ、衰退させてなくしてしまわなければなりません。 

 寒地型芝草が残っていると、もともとあったコウライシバが、普通に芽吹いて大きくなることが出来ないのです。なぜでしょうか? まぁ、感覚的には分かりますよね。「肩身が狭い」からではないでしょうか?

 科学的には、“太陽光があたりにくい”という理由が一つあります。つまり、4月ころといえば、コウライシバがこれから“立ちあがろう=芽吹こう”としている時なのです。そうして、立ちあがってスクスクと青い葉っぱを成長させていくには“太陽光”がとても重要なのです。それは、光合成にも必要ですし、熱を得るためにも必要です。

 しかし、周囲には寒地型芝草があります。寒地型芝草は、一般的には、日本の4月ころの気候が一番すきなのです。つまり、寒地型芝草にとっては、4月は、居心地がよくて、どんどん伸びる時期なのです。だから、余計にコウライシバを圧迫する。コウライシバが、回復不能なほどに衰退していく様子が目に浮かびませんか?


解説=最大の難所“トランジッション”
 オーバーシーディングが難しいと言われることのネックは1点に絞られます。それは、冬の時期の洋シバが優勢な状態から、もともとあったコウライシバなどが優勢となる夏の時期にむけて、如何にうまく両者を切りかえることができるかです。

 この切り替えを“トランジッション”と言います。頭の中ではね、分かっていても、なかなかできないんですよ。私も経験があるから言うんですがね。そのトランジッションを行なう時期っていうのがね、それはもう、芝生がきれいな時期なんですよ。4月頃?

「え? これが我が家の芝生? どこにもないぞ、こんなきれいな芝生を持っている家は。」
なんて、鼻高々になります。

 とても、その状態に手をかけて、それを枯らせていこうなんて、思えないんですよ。もう、麻薬みたいなものですよ。「これから芝生を始めよう」っていうような入門者は、足を踏み入れない方がいいと思うなぁ?

図解=陥りやすい失敗



解説=オーバーシーディングの不思議
 
 オーバーシーディングは、普通の人には不思議に思うだろうなぁ。
 「秋にせっかく種をまいたんだから、その種で大きくなったものを、次の年からも大切に育てていけばいいのに。わざわざ枯らせて、また秋にまくの?」
って、思うとおもうんですよ。私も、最初はそういう印象を持ちましたからね。夏には(実際には夏になる前の春頃には)、それら(前年の秋にまいたもの)は、枯らせておかなければならないのです。
 それらが、残っているとね、もともとあった、コウライシバが立ちあがれないんですよ。
 「立ちあがれない」って言うのは、文字通りです。用語でも「『立ちあがり』が遅れる」とか、「『立ちあが』らない」とか言います。要は春になっても青くならないのです。で、このコウライシバが青くならないのが、実は見分けがつかずに手遅れになってしまいます。だってそうでしょう。青くなれない(立ちあがれない)コウライシバの廻りには、“青々した”寒地型芝草が繁茂しているのですから・・・。そんな、どの葉っぱがコウライなのかペレライなのか?

 それらを、人為的に衰退の方向へ導いて(実際には枯らせて)コウライシバだけがそこにあるような状態にもっていかねばなりません。これを、“夏季のコウライシバの単独育成を計る”と言って、オーバーシーディングの重要な視点となっています。
 


解説=オーバーシーディングと寒地型の(通年)単独育成の違い
 
 同じように寒地型芝草を植えるのですが、オーバーシーディングと寒地型芝草だけを、一年中、単独で植えるのでは、考え方は全く違うと言っていいでしょう。簡単に言うと、寒地型芝草を単独で植えておく場合は、思いっきり耐暑性のある品種が有利です。逆に、オーバーシーディングを成功させようとすると、耐暑性は必ず支障となります。

 オーバーシーディングのネックは“トランジッション”にあると言えます。トランジッションとは、秋冬期に旺盛だった寒地型芝草を自然な形で衰退に導いてそれを枯らせ、暖地型芝草だけだった状態に戻すことです。つまり、暖地型芝草の上にまく寒地型の性質は、夏になったら簡単に枯れてくれなければなりません。

 オーバーシーディングをせずに、寒地型芝草だけを植える場合。この場合は、暖地型芝草を温存しておく必要はない訳ですから、“枯れやすい”性質なんて、全く必要ではありませんね。カタログを見ながら、一番つよそうな(?)の品種を選んだらいいのではないでしょうか?




解説=秋スタートの理由
 播種(種をまくこと)は、一般的には秋に行います。「コウライシバは春がいい」と書きましたが、寒地型芝草のスタートは、なぜ秋なのでしょう? 目的によって全く別の二つの理由があります。
 それは、@オーバーシーディングの場合と、A寒地型芝草の単独育成の場合です。

@オーバーシーディングの場合

 これは、明かですよね。秋冬期に活性が低下して休眠期に入る(茶色くなる)コウライシバやノシバの、緑色保持のお手伝いですから。このタイミングにまかなきゃ、意味がありません。


A寒地型芝草の単独育成の場合

 それは、やっぱり夏が怖いからなのです。寒地型芝草は、春とか秋の気温が大好きです。だから、発芽して成長すること自体は、春でも秋でもそんなに変りません。むしろ、これから暖かくなっていく、春の方が有利かもしれません。
 しかし、春に発芽して3〜4ヶ月しか経ってない体では、夏越しが難しいのです。夏の灼熱地獄に耐えるためには、やはり前年の秋に播種して、ある程度の基礎体力を身につけていないとムリなんです。

解説=洋シバについての私見
 私は、日本の公園や広場に植えるシバとしては、コウライシバが最適だろうと思っています。ですから、私は、HPのタイトルにもあるように、このFAQも「公園で管理する芝生」のことをベースにして書いています。
 広場的な芝生で、夏のお日様がガンガン照りつけるようなところで寒地型芝草を適正に育てることは、やっぱり難しいでしょう。そう、シバの長さ(高さ)も、せいぜい3センチくらいでおさえないといけないし。暑さで衰退するのは間違いありません。

 しかし、いわゆる“ガーデニング”の世界(あまり知らない・・・)では、“広場的な芝生”ではなく、樹木やプランターの隙間に見え隠れするような“ちょっとしたシバ”がありますよね。ああいう使い方なら、むやみに「難しいですよ」と言うのも気が引けますね。庭の木陰などで、あまり刈り高を気にせず、比較的長めにしておけるような環境であれば、耐暑性のある品種であれば生育は可能なんだろうと思います。

 でもね、そうは言ってもね、コウライシバを育てている人が、その上にオーバーシーディングするのは、それは、たいへん難しいと思いますよ。特に初めての人はね。はい。

図解=寒地型芝草が無理なく生育できる環境
 
 



6.その他


解説=屋上緑化
 まず、荷重の問題です。マンションの設計では、ベランダの強度は、洗濯機みたいなものを据えることを想定して安全率を計算してあるでしょう?

 そこへ、シバを敷くために10センチの土を盛ったとすれば、1uあたり200kg近い荷重を常にかけることになります。根本的に、そういう荷重に耐えられる構造になっているかという問題があります。

 あとは防水や散水・排水設備の問題ですね。屋上には、“水勾配”といって、人間の目では分からないくらいの緩やかな勾配がつけてあります。雨水を自然に樋に集めるためです。そういう構造(集水口)なんかの機能に支障がないかどうかも問題ですね。
 


解説=植物残さの処理
 
 ここ数年、公共の施設としての公園等を維持管理していて発生する、垣根の枝や芝生の刈りカスをどう処分するかが大きな問題になっています。各自治体が頭を痛めていることは、次の2点に集約されそうです。
@野焼きなどが禁止される中、
 一般廃棄物として焼却処分するには、
 施設のキャパシティが不足しすぎている

A植物残さは、堆肥化して有効利用したいが、
 効率的な手法を見出せないでいる
 

この問題についてはレポートを参照ください。(HP「公園の芝生について」のメニュー“レポート”から“その他”です)



解説=飼い主のマナー
 公園を管理していて一番、困っているのがこれですね。そりゃ、野良犬や野良猫の場合もありますよ。でも、飼われているペットによる被害も相当の割合で存在するとみるのが妥当でしょうね。

 看板を立てて掃除をしたり、注意を促したり。ことによっては飼い主に注意をしてみたり・・。糞を置き去りにしていく飼い主を追いかけて行って、「あれ、片付けてください」なんて言うのもね、けっこうエネルギーのいる行動なんですよ・・。とほほほ。

 いちばんイヤなのはね、幼稚園の子供たちが遊びに来てね、泣くんですよ。ウンチを踏んで・・・。もう、申し訳ないやら、腹が立つやら・・・。

 犬を公園で散歩させる飼い主のみなさん。お願いですから、糞を置いて行かないで下さーい。



解説=公園の維持管理予算
 公園の管理費用は、いわゆる税金でまかなわれています。無駄遣いは許されません。限られた予算で、最大限の効率を上げようとするのが自然ですよね。そのため、芝刈り、施肥、目土散布や薬剤散布、各種更新作業などの中から、優先順位をつけてメニュー化して施工しています。

 限られた予算の執行という観点から、公の施設としての都市公園の管理をレポートしました。お暇な方は、ご覧下さい。

(HP「公園の芝生について」のメニュー“レポート”から“都市公園の管理”にあります)


 
 

解説=管理レベルの考え方
 公園を管理するときには、管理レベルを意識します。「この公園はどの程度、きれいにしておけばよいか」といったものです。「できるだけ、きれいにしておけ」と、納税者はおっしゃいます。でも、まぁ、予算が限られていますからね。優先順位をつけて施工するのです。

 その公園が設置されている目的や意義も関係しますよ。野球場や陸上競技場を持っている大きな“運動公園”では、競技施設の芝生にたくさんのエネルギーを使います。レジャーや休憩が目的の公園では、芝生広場が、木陰と共に重要な項目になります。

 そういう意味では、家庭の芝生は、そんな殺菌剤までまいてきれいにしておかねばならないかと言われると、私は、それほどでもないのでは? と思うわけです。


解説=公園管理への住民参加
 最近は公園の建設や管理に“住民参加”が取り入れられるようになってきました。公園を計画したり建設する段階から、役所は、周辺住民の意見を取り入れるのです。そうやってできあがった公園では、利用者の間にも「自分たちで作った、自分たちの公園」というような意識が形成されやすいのです。
 そこで、役所が考える管理方法と、住民活動の一部を摺り合わせる形で、住民らによる“自主管理”が興ってきました。そうすれば、町内会の定例行事として公園の草むしりも可能です。しかし、こういう手法が可能なところはいいのですが、そうではない公園も現実には多数あります。

 “人”がする草むしりは、一般的には“機械”がする除草剤散布に比べると、価格的に高価なものとなります。



解説=役所の公園管理予算
 これについては、新しいレポートを掲載しましたので、そちらをご覧ください。
(HP「公園の芝生について」のメニュー“レポート”から“都市公園の管理”にあります)

解説=専門家の言うこと
 世の中にはたくさんの“専門家”がいます。本当の専門家もいますし、“自称”専門家もいます。専門家でなくても“専門家のふりをしていなければならない人”もいます(私・・・)。
 素人の方が、専門家に意見を求めると、ややもすると、よけいに混乱することがあります。ここで、専門家の言うことを聞くときの注意点をお教えしましょう。二つあります。
@あなたのレベルに配慮したアドバイスかどうか?
Aお勧めの方法に、商売が絡んでないか?


 専門家は、間違ったことを言えません。ですから断定を避け、可能性を列挙するようなことが、たまぁーにあるみたいですよ。(実は、私も、最近になって、その気持ちが少し分かるようになってきた・・・。でも、私は専門家ではありませーん)

 「その症状は、こういう理由でも起こるし、ああいう理由でも起こる・・・。○○が原因の場合は××となって現れる傾向が強い。特に厄介なのは、**が影響している場合で・・・」
 もう、「何をいってるのか『分からん』っちゅうの」状態になってしまいます。頭の中に残っているのは印象的な言葉だけ・・・。「そうか、**がいけないんだな?」

 私は、こういったことを、“聞く立場”としてイヤというほど経験しています。

 あと、シバを売ったり工事したりしている人の中には、

 「私は、こんな難しい条件下でも、シバの植付けに成功した」
なんてことを言う方もいらっしゃいますよ。
 「そりゃ、“あんた”だからできたんだろ!」
 また、
「ちょっと今、仕事がなくて・・・」
なんてことで、“積極的に勧める”人もいるかもしれない・・・。

 私は、みなさんにお答えするときには、

「これは、だいぶ自信があるぞ」とか
「これは、ちょっと自信がないぞ」とか、
「まぁ、よく分かりませんが、こういう可能性もあるかもね」
というように、正直にお答えしていますよ。



 
 

FAQは、これでおわりです。
ごくろうさまでした