肥料の性質と施肥時期の問題

私がこの仕事に就いたころは、公園管理において「緩効性肥料」は、そんなには一般的ではありませんでした。
皆、「普通の」普通化成を使っていました。
価格の安い化成肥料には、解けて土中に硝酸などの有害な物質を残す割合が高いものが多いようです。

肥料の3要素の中で、もっとも重要なものはN(チッ素)だと言うことができるでしょう。
このチッ素を含む化成肥料を芝生にまくのですが、芝生はすぐにはこれを吸収できません。
 
「芝生用肥料」として売られている緩効性肥料は、そのあたりが研究されています。
植物に吸収されやすい形態(アンモニア態や硝酸態)に早く変化し、有害な形(硝酸や亜硝酸)で残る割合が少ない「芝生専用肥料」に、最近は切り替えていっています。少し高いですが。

富山県総合運動公園では平成6年の春に、いい勉強をしました。インターハイがあった年です。
3〜4月からラージパッチやフェアリーリングといった担子菌類による病害が多発しました。
関係者から「オイ、大丈夫か?」と何度も聞かれました。

原因は、こけら落しのサッカー試合に向けて前年10月下旬に、芝刈りによってできた「むら」を補正するために散布した多量のチッソ系肥料でした。


平成5年11月3日、日韓親善サッカー
この「色むら」を補正するために1週間ほど前に
多量のチッソ系肥料を散布した


 翌年春、ラージパッチならびにフェアリーリングといった病害が激発した

秋冬期のチッソ過多によって、芝草の植物体内の水分含量が高まり、細胞壁は薄くなって干ばつ、低温、病気、害虫、刈取り、踏圧等のストレスに対する抵抗性が低下して*、翌春にいっせいに病害に見舞われたというシナリオです。
アンモニアがタンパク質に変わる過程で生成されるアミノ酸やアミドが体内で増加し、これが昆虫や微生物の侵入を助長する*のが大きな原因です。

*:ソフトサイエンス社「新訂芝生と緑化」より引用
 秋になったら、安易に肥料をやってはいけません。まいたとしても、9月初旬には、どうあってもまき終わるようにしてください。