指定管理者制度における管理水準の数値化とレベル確保

これは、平成18年10月30日、米子市で開催された、2006年日本芝草学会秋季鳥取大会の公園緑地部会で上原が発表した内容の要約です。

 
 地方自治法の一部が改正され、都市公園等の「公の施設」の管理には、指定管理者による管理という新たな形態が加わった。管理方法や作業の実施手法が多様化する中、管理のアウトプットである芝生の状態評価の基準が確立されていないという課題がある。

1.ゴルフ場と都市公園の芝生管理レベル 
 都市公園等の公共緑地の芝生管理レベルは、ゴルフ場のそれに遠く及ばないとするのが一般的な見解と認識される。ゴルフ場の芝生管理の品質保持には市場原理が働きやすく、都市公園の管理には指定管理者に市場原理が働きにくいという状況がある。
 これには、都市公園の芝生管理レベルに客観的な指標でこれを評価できる基準が確立されていないことが大きい。ゴルフ場では、芝刈りや施肥の回数の多寡を中心に論議することは少ない。一方、管理の出来高としての芝生管理レベルを評価できない都市公園では、その芝生が本当に良好な生育状況にあるかどうかの見極めの前に、まずは施工回数等、数値で計ることのできる指標に頼ろうとしがちである。


2.指定管理者募集における数値化された仕様

 長引く景気低迷による自治体などの財政制約は大きく、管理コストの縮減は今後更に厳しくなっていくことが予測される。「施工回数を縛った上で、価格を競わせる」傾向が強い指定管理者の募集では、更に悪い面が現れてくるのではないかと懸念される。
 芝生は、「何がどうであれば80点なのか」といった評価不在の中、ダンピングして指定を受けた指定管理者が義務的な作業だけをこなす、といった傾向が強まり、自治体がさらに細かく施工回数を規定しようとする悪循環が想定される。本来、限られた予算の中で一定の水準をどのように工夫しながら達成したかを評価すべきところ、募集にあたって、管理水準を数値化された施工回数で示して管理者を選ぼうとする姿勢は適切とは言い難い。
 
3.環境保全志向との調和
 一方、都市公園の芝生の維持管理については、以前は雑草や病害の侵入を極力抑制する形で、いわゆるゴルフ場並のハイレベルな状態維持を目指していた時期があり、管理作業に使用する資機材等の改良・発達により都市公園の芝生管理のレベルが成熟したと看做される時期もあったと認識している。
 そのような状況にあって、国営公園では、もう10年以上前から、芝生管理については別の視点を持って管理方針を軌道修正している。市民の環境保全志向が高まる中、化学製剤品の使用を極力抑制していくことを第一義とし、並行して、芝生地を「雑草一本ない状態」ではなく一定の雑草の侵入を受忍していこうというものである。もちろん、その導入には経済的な要素も影響していたと考えるが、前提として環境保全に対してきちんとした理念があったことは確かである。


4.評価基準の早期策定 

 きちんとした理念を持って雑草の侵入を一部受け容れることと、価格圧縮のために本来行わなければならない作業を割愛し、結果として雑草の繁茂を招いてしまうこととは全く意味が違う。
 自治体が施工回数と予算をセットにして指定管理者を選定・評価しようという状況の中、芝生管理の技術者は確かな技術の習得と研鑽に努め、税金を原資として賄われる指定管理予算で的確な成果をあげなければならない。
 そして、各指定管理者がその技量をより正当に評価されるためにも、評価は、「施工回数の消化状況」ではなく「芝生状態の絶対評価基準」をもって下されなければならない。そのためにも、本学会はじめ関係者による芝生の維持管理レベルの客観的評価基準の策定が急務であると痛感している。
5.当日発表
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