環境問題からの芝生管理の今後


地球環境の問題として有名なものに、「酸性雨」があります。 酸性雨被害の多くの問題は、具体的には「植物が育たなくなる」という結果に集約されます。
酸性(pH値が低い)雨が降ると、土壌中ではアルミニウムやマンガンといった金属が溶け出してきます。
これらが大量に解け出ると、それが植物体内に吸収されて、生理障害(生育阻害)が起こります。
北欧でマツが枯れるなどの被害が出ている現象が典型的な例です。
化学肥料による害も、現象としては同じような結果を引き起こす「土壌の衰退」として現れます。



さらに「環境ホルモン」の問題もあります。
これは、土壌が衰退して収量や快適性が失われるという二次的な問題ではなく、われわれの人体に直接的に働く恐ろしいものです。気が遠くなるような微量でも作用してしまうと言われるダイオキシンなどはその典型でしょう。

芝生管理で通常に使用する茎葉処理剤(除草剤)にも、ホルモン作用撹乱型というタイプがあるくらいですので、一般の人々が、ゴルフ場や公園の芝生管理に神経を尖らせるのも無理のないことだと思います。



問題は、環境保全志向に即応して、どのように事を進めていくかということの検討だと思います。
今ある芝生を「草っぱら」にしてもOKというのであれば話は別です。

しかし、そうでない以上、芝生管理についての我々の方向性は、
「自然」の恵みである芝草を維持管理していくうえで、いかにその対極にある「化学」物質の使用を減らしていくか、ということになっていくと考えられます。

業務で取り組むべき姿勢としては、具体的には、使用する材料を吟味して、
「なるべく自然界にある材料並びに自然の物から生成した比較的安全なものを使っていく」
というスタンスでしょう。
肥料のところで説明したように、現在はまだ化学肥料をゼロで管理することも、ましてや化学薬品の代表である除草剤を全く使用しないで管理することは困難であろうと考えられます。



公共広告機構が言うように、「地球はリセットできません」。近い将来、公共の施設としての公園の管理場面でも、農薬を使わずに管理していくようなスタンスに移行して行くことになるかもしれません。

ただ、ひとつだけ、はっきりと言っておかねばならないことがあります。
それは、その決定の前に、富山県で環境問題を意識した「減農薬・無農薬」管理を推し進めていくためにも、前項「減農薬・無農薬」で申し上げてきたように、関係者が総じてこの問題に真剣に取り組み、その中で皆がレベルアップして、さまざまなディスカッションを積み重ねていくことが不可欠ではなかろうか、ということです。

最後にもう一度、言います。化学薬品などを、
使わないだけなら、簡単なのです

「農薬は恐いから」「環境ホルモンが含まれているから」「農薬を使わなくても管理はできるはずだ」 etc
これらの大きな声に後押しされて、行政サイドが「公園管理の無農薬化」を決定することはできるでしょう。
しかし、技術的に非力な自治体ではうまくいかないことが予測されます。農薬を使わないで、その代償として払わなければならない代替作業等への予算措置を含めた議論を経てならばよいのですが・・・。
 

「よくわかる芝生管理」は、これですべて終わりです
おつかれさまでした